2012年5月29日火曜日

身近な草花 フジ(ツルはどっち巻き?)

昨年作ったパーゴラにフジがツルを伸ばしたのでちょっと観察してみました。

ツルの巻き方をよく見たらこんな巻き方でした。


この巻き方は「S巻」(文字の形と同じでしょ)と呼ばれる巻き方で、左手で柱をつかんで親指以外の四本指が絡まる方向へ回したときと同じ巻き方なので「左巻(sinistral)」もしくは単に「左手」と呼ばれる巻き方です。

これはDNAの二重らせんとは逆の巻き方になります。
この図にあるように、DNA分子を柱に巻き付けたとしたら右手でつかんで絡まる方向へ回したときの指の動きと同じになります。
この巻き方は「Z巻」もしくは「右巻(dextral)」「右手」と呼ばれます。

「そおかあ、フジは左手なんだあ」と思って少しネット検索したら、「単にフジという場合のノダフジは右巻で、ヤマフジは左巻である」という記事に出会いました。

「えっ?じゃあ、うちのはヤマフジなの?」
これ、どう見ても左巻なんだけど。
でも、もらってきたときはそんなこと言われなかったし、花房も長いからどうみてもノダフジの系統なんだけど。
もしかしたら突然変異株なの?!
もしかしてすっごい貴重な株なの!?

やや焦りつつ、も少し検索続けたらこのサイトに行き着きました。とてもいい勉強になりましたよ。
これがヤマフジで、学術的に表現するなら間違いなく「右手」なのだそうです。
和式の表現ではらせんを進行方向側から覗いて反時計回りに巻いているのを「左巻(あくまでも日本でだけ通用する言い方?)」と言うのだそうです。
巻いているそのものになったつもりで、左方向へ移動する場合に相当するのですね。日本人らしい自他の区別の混沌としたややアニミズム的な表現で趣深いですなあ。

ま、とにかく、ですから、普通のフジは学術的に言うなら「左手」で、うちのフジはごく普通のフジでした。

あああ。ちょっと期待したんだけどなあ。


2012年5月27日日曜日

第65回関東大学ボクシングリーグ戦 第2節

5月26日(土) 第65回関東大学ボクシングリーグ戦1部2部の第2節が、格闘技の殿堂後楽園ホールで行われました。

今回初めて試合開始から終了までの全試合を観ることができました。

そうとは判っていたつもりですが、関東大学ボクシングリーグ戦が日本アマチュアボクシングの最高峰であることは間違いないと確信しました。

もちろん大学選手以上に強い選手はたくさん居ます。オリンピックでメダルが期待できる村田選手のような世界レベルの社会人アマチュア選手も居ます。
ですが、関東大学ボクシングリーグ戦ほどハイレベルな選手をそろえ熱気ある試合を展開している公式戦は無いでしょう。



もっと関東大学ボクシングリーグ戦に興味を持つ人が出てくると、ボクシングの競技人口も増えるんだろうなあと思いました。


結果です


高校生ボクサーも、関東大学ボクシングリーグ戦を観に行こう。
とてもいい勉強になるよ!

次は6月9日(土)です。





身近な草花 ムラサキツユクサ

ムラサキツユクサ(Tradescantia ohiensis)はツユクサ科の多年草です。
栽培が簡単で、5月下旬から7月にかけて毎日のように花をつけるので授業で使うには便利な植物です。

花弁3、雄蕊6、雌蕊1の花をつけます。雄蕊にはたくさんの細毛が生えていて、これは細胞が数珠状に連なった構造をしているため、原形質流動や原形質分離の観察には重宝します。


ムラサキツユクサの学習には次のサイトが参考になります。



ムラサキツユクサを観察していると時々花弁や雄蕊の本数が通常と異なる変異があることに気付きます。下の写真は花弁5、雄蕊9の変異です。

うちの庭のこの株は他の株より変異の出現率が高いように思います。



変異が出現する遺伝子レベルでの授業ができれば楽しいのにと思っていますが、まだ勉強不足でそこまで行けません。



2012年5月23日水曜日

公開授業 細胞小器官

高校生物では必ず学習する細胞小器官(オルガネラ)ですが、様々な器官を羅列的に学習しても生命現象の本質を理解することはできません。

細胞小器官同士が互いにどの様に連携しているのかを理解し、その連携が滞りなく進んでいることが「生きている」という状態なのだと判るような授業をするべきだと思います。

そんなつもりで授業しました。
前半です。

後半はこっちです。

この授業の中では次の小器官が登場しました。

核(核膜・染色体)
リボソーム
小胞体
細胞骨格
ゴルジ体
細胞膜

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授業の後次のような項目を確認します。

1 これらの内、光学顕微鏡で観察できるものはどれでしょう。

2 光学顕微鏡で観察できない小器官の存在は、どの様な手段で確認されたのでしょう。

3 これらの内、リン脂質二重膜で作られている構造物はどれでしょう。

4 ある細胞がタンパク質でできた分泌物をエクソサイトシスしました。その流れをこれらの小器官の働きに触れながら説明しなさい。

できましたか?

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授業で使った動画のほとんどはYouTubeで試聴できます。

小胞体からゴルジ体へ、さらにエクソサイトシスへ。

エクソサイトシスとエンドサイトシスにおける膜の振る舞いについてはこちらを。

エンドサイトシスで取り込まれる小胞の形成についてはこちらを。




2012年5月21日月曜日

金環日食 木漏れ日で観察しました。

2012年5月21日の金環日食を、プラタナスの木漏れ日で観察しました。

樹齢100年を迎えようとしているプラタナスの大木です。本校のシンボルです。

校舎に映された木漏れ日は部分日食の太陽を映しています。
原理はピンホールカメラと同じですね。
これは、プラタナスと並ぶ本校のシンボルであるユリノキの影です。

左がユリノキ、右がプラタナスの影です。
どちらにも三日月型にかけた太陽が無数に映っています。

食がだいぶ進んでもうすぐ金環になりそうです。


きれいなリングがたくさん見えました。

生徒たちも校舎を見上げて居ます。



金環日食の後はこんなことしてみました。
影絵です。

キツネの目は部分日食の太陽です。

チョンマゲの浪人。
楽しかったです。ご協力いただいた先生方、生徒のみなさん。ありがとうございました。




2012年5月17日木曜日

公開授業 興奮の伝導

ニューロンに生じた活動電位(興奮)がどうやって隣接部に伝わっていくか(伝導するといいます)の授業です。



この授業を理解するためには電圧依存型ナトリウムチャンネルの働きを理解しておく必要があります。この授業の動画には写っていませんが黒板の脇に電圧依存型ナトリウムイオンチャンネルの動作機序を書いてあります。
この働きについては静止電位と活動電位の授業を見て下さい。

興奮の伝導を授業するときには、無髄神経の伝導と有髄神経の跳躍伝導を比較して伝えることに気を配ります。
それも、「こっちはこうなってるの。で、こっちはこうなの。判ったね」じゃなくて、進化の過程に思いを馳せるような授業をしようと心がけます。

それは、生物学を学問として理解するには、どんな場合でも「進化の視点」が必要だと考えるからです。

生物はとてもよくできています。驚くばかりです。でもそれは、神の仕業でも宇宙意思の現れでもなく(こういうことを平気で信じる高校生たくさん居ますよ)進化の結果なんだよと、伝える義務が、科学としての生物学を教える教師にはあると思います。

この授業の後、興奮の伝達の授業に進みますが、それはこちらの授業を見て下さい。


2012年5月15日火曜日

公開授業 ニューロンの構造

ニューロン(神経細胞)の構造を授業するときに注意すべきことは「名前が違うところには異なる機能が存在するんだよ」ってことをどれだけ明確に伝えられるかどうかだと思います。

とかく生物の授業では「覚えてしまえばいいんでしょ」ってことが言われますけど、この姿勢は生物学を科学と見なしていない、とても貧弱な思想の表れだと思います。

神経細胞体(樹状突起を含む)、と軸索と、神経終末は、異なる膜タンパク質の作用により異なる機能を有しています。異なる機能があって区別しなきゃいけないから別の名前をつけてんですからね。

神経細胞体:
前シナプスニューロンからの神経伝達物質を受容し電位を発生させます。神経伝達物質のレセプタが化学物質依存型イオンチャンネルとして働き、細胞体全体として複数のシナプスからやってきたシグナルの積分装置として働いています。

軸索:
ナトリウムカリウムポンプ・静止型カリウムチャンネル・電圧依存型ナトリウムチャンネル・電圧依存型カリウムチャンネルなどが存在し、静止電位と活動電位を生じさせることにより、興奮の伝導を行います。

神経終末:
電圧依存型カルシウムイオンチャンネルの存在とカルシウムイオンの流入を引き金としたシナプス小胞からの神経伝達物質の放出を行います。

これらの内容は高校生物のレベルを超えているかもしれませんが、「こういうものなの」「覚えればいいの」に満足できない生徒のために、また、そういう科学的探求心(文科省や教育委員会の喜びそうな言葉だなあ)を持った生徒を作るためにも取り組む必要があると思うよ。

ニューロンの構造について、以上のことを意識して授業をしました。


静止電位と活動電位の発生について授業しました。


授業の中で使っている細胞膜の流動モザイクモデルに関する動画はこちらにあります。


2012年5月13日日曜日

北海道の草花 その4 エゾヒメアマナ

エゾヒメアマナはユリ科キバナノアマナ属の北海道分布種です。分布は北海道に限定されています。

下の写真の株は紋別郡遠軽町で見つけました。が、正直なところよく似た種のヒメアマナなのか本物のエゾヒメアマナなのかよく判りません。


いい加減でごめんなさい。


以下、エゾヒメアマナってことで話進めます。



とても細くてか弱い感じの野草です。環境省レッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等を取りまとめたもの)に記載され、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類されています。

絶滅危惧種Ⅱ類(VU)は「絶滅の危険が増大している種」に該当します。
略号のVUは「Vulnerable:脆弱な」の意味です。



この株は興部町で観察したものです。

確かに群落を作って多数観察される様子は無かったですが、絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に分類されるほどの希少種だとは知りませんでした。

今回観察したフィールドが、豊かなところだったということでしょうか。

絶滅危惧種についての情報は環境省のこのページで検索する事ができます

2012年5月9日水曜日

北海道の草花 その3 ニリンソウとトリカブト

ニリンソウは春の山野の代表的な草花です。花がかわいいし葉っぱは天ぷらにするとおいしいんだそうです。紋別郡興部町の山で観察しました。


写真がへたくそなので花の中心部の構造が見えませんが黄色いめしべ(雌蕊・しずい)と白いおしべ(雄蕊・ゆうずい)がとても可憐です。キンポウゲ科の多年草です。


こちらはトリカブトです。ニリンソウと同じキンポウゲ科の多年草です。花が咲いていれば僕でもすぐにそれと判るのですが、葉だけだと詳しい人に説明されないとそれと判りません。

で、こいつが猛毒を持っているのです。
アコニチンというアルカロイド(含窒素塩基性有機物)系物質です。これは、摂取後数十秒で死にいたることもある猛毒です。(下の構造式はウィキより)
アコニチンはフグ毒のテトロドトキシン(TTX)と似た仕組みで神経細胞の活動を停止させます。
すなわちこいつは、電圧依存型ナトリウムイオンチャンネルに不可逆的に結合し、チャンネルが閉まらないようにしてしまいます。その結果活動電位は修復せず神経系の情報伝達に大きな混乱を生じさせます。

神経細胞が活動電位を生じさせる仕組みを勉強した高校生なら理解できるかな?勉強したい方は下の動画を参考にして下さい。



花の咲いている時期しか観察したことのないわたしは「なんで間違えるの?」って思ってましたが、フィールドを歩いてよく判りました。下の写真をご覧下さい。


写真左の株が猛毒トリカブトです。右のやや黄緑がかった株が山菜として食用にされるニリンソウです。ちなみに中央下に写っている小さな株はヨモギです。

山菜採りに夢中になっていて、こんな近くに混生していたら、間違って採って食べちゃうよねえ。

北海道の地元のお年寄りは「ニリンソウは花が咲いている時期しか食べないもんなんだよ」と教えてくれました。お年寄りの知恵ってすごいなあ。

花が咲いていればトリカブトと間違えなくて安心だよね。

2012年5月8日火曜日

北海道の草花 その2 ミズバショウ

子供の頃この花が怖かったのです。雪解けの湿地にドカンと出現するこの花を地元では「ヘビノマクラ」と呼んでいました。

紋別郡の湿地で群落を見つけました。


白い火炎のように立ち上がっている部分は「苞(ほう)」と言います。花びらではなく葉の変化したものです。
白い苞が先に出て後から葉が出てきます。
苞が葉の変化したもので白いってことは、クロロフィル合成を停止しさせる遺伝子が発現しているってことなんでしょうか?サイトカイニン系の植物ホルモンが関与しているんでしょうか?よくわかりません。

中央のトウモロコシの芯のようなものが「花序」といって、小さな花の集合体です。甘い香りを放っています。

分類上はサトイモ科の多年草です。下の写真のような大きな葉を見ると「サトイモ科かも・・・」とおもいますが、あまりサトイモっぽくありません。


ですが、あるお方が「苞の周りをつかんだ感触はまさしくサトイモだ!」とおっしゃっておりました。
オホーツク海沿岸の紋別郡地方には下のような群落がいたるところで見られます。ごく普通の野草です。

群生している所は、こんな湿地ですし花序はあんな形ですし、地元の呼び名はヘビノマクラですし、この花を見に高原に出かけたり、歌にうたったりする気持ちが子供の頃はわかりませんでしたが、今は「ああ、美しいのだなあ」と思います。




2012年5月7日月曜日

北海道の草花 その1 カタクリ・エゾエンゴサク

帰省したついでに撮影してきた北海道の草花を、少し紹介します。

カタクリとエゾエンゴサクです。

カタクリの群落です。
カタクリは学名(Erythronium japonicum Decne.)にjaponicumとあるように、分類上の基準標本が日本産の、ユリ科の多年草です。
旭川市の山の斜面一面に群生していました。「スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)」「春の妖精」と呼ばれる早春の短期間だけ姿を見せ、一年の大半を地下茎のみで生活する植物の仲間です。Ephemeralは「儚い」と言うような意味ですが、これだけ群生していると、力強さも感じるほどです。

特に、この株はEphemeralな感じは全くなく、「君は、シクラメンか?」と、問いかけたくなるほどでした。

蕾が開きかけている個体もありました。 

同じ山で観察できたエゾエンゴサクです。ケシ科の多年草です。小さい頃この花を摘んで花の付け根の蜜をチュウチュウ吸ったのを思い出しました。

カタクリとエゾエンゴサクは一部混生していましたが、カタクリが優勢な区域とエゾエンゴサクが優勢な区域が明らかに分かれていて、2種の競争関係を調べたら面白そうだなあと思いました。

下の写真で水色に見える区域はエゾエンゴサク優占の群落です。どういう加減に棲み分けているのか、知りたいなあ。