生物基礎の学習指導要領でも取り扱うこととなっていますが、その要点は次の三つです。
① 「転写と翻訳の概要を扱うこと」
② 「タンパク質の生命現象における重要性にも触れる」
③ 「すべての遺伝子が常に発現しているわけではないことにも触れる」
タンパク質の重要性については既に授業展開を示していますのでここでは①と②の展開例を示します。
今回も、生物基礎を学習した生徒が(基礎無し)生物の学習へ進むことを考えて授業を組んでいます。展開案のプリントはPDFで落とせます。
1 遺伝子からタンパク質が合成され(そうではないこともたくさんありますが)そのタンパク質が機能して細胞に個性が生じることが「遺伝子の発現」です。
2 DNA → RNA → タンパク質 の流れが生物共通のものであることをわかってもらいたいですね。
3 DNAとRNAで、単位であるヌクレオチドの構造や立体構造の違いを理解する事は生物基礎のレベルで必修でしょう。発展的にはDNAとRNAの分子進化を学ぶ際の足がかりを、ここで作っておきたいと考えます。そこで、次の点に注意して授業をします。
DNAは非常に安定な物質であり情報の保存役としては好都合であるけれど、安定であるからこそ反応性が低く、化学反応を触媒する酵素的分子としては不都合であること。
RNAはDNAに比べて不安定な物質であり遺伝情報の保存役としては不都合であるけれど、不安定であるからこそ反応性が高く、化学反応を触媒する酵素的分子としては好都合であること。
高校1年生に理解してもらうのは非常に難しい内容ですが、古代人の毛髪から遺伝情報を解析することが可能なこと等で、DNAの安定性を伝えます。一方、RNAにはmRNA、rRNA、tRNAなどのバリエーションの他に、RNA干渉などの酵素的役割を持つ事例を挙げて、RNAが遺伝子発現の調節に酵素(タンパク質)以上に深く関わっていることを伝えたいですね。意欲的な生徒は食いついてきます。
4、5、6、7 は説明をはぶきます。
ですが、転写・スクライシング・翻訳については図や板書だけでなく動画などで具体的なイメージを持たせることが重要だと思います。
ちょっと長いですがこの理化学研究所作の動画はとても使えます。
8 ゲノム計画の著しい進歩などを伝えたいですね。京都大学のヒトゲノムマップがなかなか美しくてよろしいと思います。
とことん突き詰めたい生徒にはこれを紹介します。
9、10 では細胞質が発現する遺伝子の調節をしていることを伝えることに重点を置きます。これをしっかり伝えるかどうかで、発生過程の分化が理解出来るかどうかが決まってくると思います。
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