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2012年2月21日火曜日

入試解説 PCRによるDNA分子の増加 神戸大学改

生徒から質問された、神戸大学で出題されたPCR法による一本鎖DNA分子の増加に関する問題の解説です。
詳細はそのうち動画であげます。とりあえず、解法の道筋を説明しましょう。

問題はこれです。(PDFファイルもあります

1000塩基対の二本鎖DNA1分子を鋳型としてPCR反応による標的遺伝子の増幅を行った。1サイクル後の結果、700塩基の一本鎖DNAと900塩基の一本鎖DNAが合成された。PCR反応は理想的な状態で進行すると仮定し、10サイクルのPCR反応を行った後には、どの様な長さのDNAが何分子存在することになるか答えよ。DNAの分子は全て一本鎖で数えることとする。


PCRの解説についてはこの動画をご覧下さい。英語ですがたぶんわかります。


以下解法の道筋です。

① このPCRではどんな長さの一本鎖DNAが出来るでしょう。
1000bpは、はじめから2本ありますし、これはPCRで増加することはありません
900bpは各サイクルごとに1本ずつ増えますね
700bpも各サイクルごとに1本ずつ増えますね
900bpと700bpのDNAの重複部分すなわち600bpがターゲット配列です
さてこの600bpはどの様に増加するでしょう
それを考えるのが②です

② ターゲット配列はどう増える?
受験参考書などではこの解説に
「 n サイクルのPCR反応をまわしたときのターゲット配列の分子数 N はホニャララである」
なあんて書いてあって
N = 2(2^n-n-1)
の数式があっておしまいのモノが多いですが、こんなの憶えてもナンセンスですね。そんなの本物の勉強じゃないね。

何故そうなるの?
それを考えるのがほんとの勉強すなわち学問でして、そのためのツールが次の表です。

③ 表の使い方
この問題で合成される一本鎖DNAがPCRの何回目では何本になるのかを計算する表です。私の自作ですが著作権を主張できるレベルのシロモノじゃありませんので、ご自由にダウンロードしてご利用下さい。
600bpの欄にあるカラーの枠は、それぞれ900bpと700bpの同じ色の枠のDNAから合成される一本鎖DNA600bpの本数を示します。
PCRのサイクルをまわすとどの様に増えるのか考えてみて下さい。

④ 解答です
900bpと700bpは毎回一本ずつ増加し、その全てから次のサイクルでは新たに600bpの一本鎖DNAが合成されます。
600bpのDNAは両方の末端にプライマーが結合しますのでPCRの各サイクルで倍倍と増加します。
結果として次の表の様な増え方をします。


600bpDNAの増加はある数列で示すことが出来ますね。その数列の和を計算出来れば求める600bpの本数になりますよ。高校生の数学で解ける問題ですよ。
後は自分の力でやって下さい。

PCRの勉強する人にはこれもおすすめです。

では、がんばって下さいね。

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